野球中継を見ていると、すぐに球速が表示されます。これはどうやって測っているのでしょうか?
あなたは、どのようにして球速を求めていると思いますか?

速度は距離÷時間で求められますから、ピッチャーとキャッチャーの距離(18.44m)を、球を投げた瞬間からキャッチャーミットに収まるまでの時間で割ればよいはずですね。
スマホで球速を調べるアプリがあります。いろいろあって、球を投げた瞬間からキャッチャーミットに収まった瞬間までを手動で操作し速度を求めるものや、スローモーション撮影して玉が移動した距離を時間で割って球速を求めているものなど様々です。手軽にできて興味深いですが精度は当てにならないですね。

実はスピードガンを使っているのです

スピードガンは動いている物体の速度を測定する装置で、最初は警察がスピード違反の取り締まりに利用していたようです。野球のテレビ中継でスピードガンによる球速の表示を初めて行ったのが1979年4月1日の巨人阪神戦、球場での表示は1980年のナゴヤ球場が最初と言われています。2004年からは高校野球の試合でも使用されるようになりました。

スピードガンの仕組み

スピードガンは高校の物理で学習するドップラー効果という物理現象を利用しています。
ドップラー効果については、👉「音って何?」で解説していますので、そちらをご覧ください。

スピードガンでボールに向かってマイクロ波(音も同じ波の一種)を照射します。ボールが止まっていると仮定すれば、照射したマイクロ波と同じ波形が反射されて戻ってきます。しかし、ボールがこちらに向かってきている場合に反射したマイクロ波は、ドップラー効果で波長が短くなります。これはボールが速いほど波長は短くなるので、これを解析すればボールの速さがわかるわけです。

スピードガンで速度を測る場合、測定精度がよく問題になりますが、スピードガンを測定対象の進行方向の正面、または真後ろから測定する場合が一番正しく計測できます。
一般的には、このスピードガンで球速を測定しますが、今では大リーグや日本のプロ野球では次のホークアイが使われています。

更に進化した映像解析:ホークアイについて

ホークアイは球場のキャッチャー、一塁、三塁、センター後方の4か所に設置した4つのカメラでトラッキング(追尾)し、撮影した映像をコンピューターで解析して球の初速、終速、球の回転、球筋などのデータを瞬時に導き出すことができます。投げたボールがストライクゾーンに入っているか、曲がり具合はどうかとかコンピュータが即座に映像化してくれます。そのため、素人でも「いいコースに投げるなあ」なんて、テレビを見ながら講釈を言ったりします。昔もストライクゾーンのどこにボールが来たかを画面で示していましたが、昔は手書きでした。
このシステムはとても大掛かりなものなので簡単に導入できるものではありませんが、アメリカのメジャーリーグで試合が行われる全30球場及び日本のプロ野球でも導入が進み、2022年でやっと12球団すべてで設置するようになりました。また、より詳しく、多くのデータを集積するためにカメラの台数を増やして解析するようになりつつあります。
このホークアイで取得できるデータは放送に使用するだけでなく、球団側はむしろ選手の育成用として活用しています。
更に、この技術は野球だけではなく、多くのスポーツにも活用されています。