小さなころは目に見えない電気よりは、動きが目に見えて楽しい機械的なものが好きでした。しかし、電気というものがわかるにつれて、電気を操ることで機械を自在に動かすことができるという喜びも感じるようになってきました。
電気に興味を持ち始めたきっかけになったのは、送電線が9本ある鉄塔を見て、なぜ偶数ではないの?と感じたことからでした。三相交流などについての知識のない子どもの頃でしたから、家庭用のコンセントなどから電気は2本で1セットだと考えていました。だから、写真のようにセットの片方がない3本の送電線はなんだろう?と思いました。これを調べるにあたって、次から次へと疑問がわき、電気というものの概要を知ることになったのです。
ここを読めば、この理由も電気の基礎基本も理解できると思います。
1 電圧とは何?これがわかると電気の基礎が理解できる
2 何で直流と交流があるの?
3 三相交流って何?~鉄塔の送電線が3の倍数の理由がわかる
4 補足:鉄塔や電柱の一番上の線はなあに?
電圧とは何?これがわかると電気の基礎が理解できる
電圧とは電流を流す圧力と考えればよいでしょう。単位はボルト(V)を使います。圧力が大きければたくさんの電流を流すことができます。言い換えれば、電圧が高ければ、電気の力で大きな仕事をすることができます。電圧が高いと言いましたが、それは一般的にアース(0V)とのエネルギーの差を言っています。つまり電圧とは2点間のエネルギーの差(電位差)を言います。100Vの電圧と言っているのはアース(地面)と比較して100Vエネルギーが高いことをいいます。
送電線は10~50万Vというとっても高い電圧です。
もし、この送電線に被覆がしてなくて裸電線だとして、そこに鳥が止まっていたとします。この場合、その鳥はまる焦げになってしまうでしょうか?
A点もB点も電圧は非常に高い。ここでいう電圧とは地面(アース)からの電圧です。しかし、A点とB点との電圧はというと0Vになります。つまり2点間の電位差が電圧だからです。従って、鳥に電流は流れず、焼き鳥にもならないのです。
何で直流と交流があるの?
まず、直流と交流について理解してもらいましょう。次のユーチューブ動画をご覧ください。
このように電気の流れ方には2種類があって、電流の向きや大きさ及び電圧が変化しない電気の流れ方をする直流と、周期的に変化する交流があります。
たとえば、電池や太陽光発電で作られる電気は直流で、発電所から送られてくる電気や一般家庭で使われているコンセントは交流です。
乾電池は直流ですから、+とーを間違えないように気を付けますね。しかしコンセントにさして使う電気製品は、プラグをどちらの向きにさしても使えます。これは、交流用の電気製品だからです。
細かな制御が必要なものは直流でないとむずかしいので、パソコンやスマホは直流で動いています。しかし、パソコンやスマホの充電はコンセントに差して使いますよね。これは、コンセントからアダプターを介して交流を直流に変換しているからなのです。
そして、そんなに細かな制御を必要としない扇風機や洗濯機などは交流で動いています。
直流は安定した力を得ることができるならば、全部直流にすればよいのではないかと疑問が生じますよね。なぜ交流が必要かという最も大きな理由が送電にあります。
発電所で作られた電気を家庭に送り届ける間にその電気エネルギーが小さくなってしまったら勿体ないですよね。送電に際して電圧が高くないと電気エネルギーの損失が大きくなるので送電の電圧は高くする必要があるのです。しかし、家庭で使うには数万Vでは大きすぎるので、変圧器で電圧を落とさなくてはなりません。この電圧を落とすことが交流は簡単にできるからなんです。
三相交流って何?~鉄塔の送電線が3の倍数の理由がわかる
三相交流は120度づつ位相がずれた単相交流が3セットあるものなので、送電線は6本になるはずです。しかし、帰り道をまとめてしまうと、そのまとめた送電線は0Vになってしまいます。ならば、なくてもよいということになり、行き道の3本で足りることになります。効率的にもいいですよね。これが送電線が3の倍数の理由です。
補足:鉄塔や電柱の一番上の線はなあに?
一番上に必ず1本の線があります。架空地線(かくうちせん)と言います。これは電気を送る線ではありません。雷から送電線を守るためのものなんです。雷の数万ボルトという高い電圧でこの架空地線に電流が流れ、鉄塔を通って地面(アース)に向かいます。だからこの時に人間が鉄塔に触れているとどうなるでしょうか?
人間の手は鉄塔にあり、足は地面にあるので、手と足の電圧(電位差)は数万ボルトになります。ほとんど即死状態になるはずです。だから、一般的に鉄塔の周囲には柵が張られ、「ここへ入ってはいけません」と注意書きがあると思います。
電圧は2点間のエネルギーの差で高い方から低い方へ流れるということをしっかり覚えておけば、電気の学習も楽しくなりますよ。