なぜ日本語は縦書きなの?
およそ1700年くらい前に中国から日本へ漢字が伝わってきました。文字がなかった日本では、自分たちが使う言葉と同じ意味を持つ漢字を当てて書き表しました。その際、中国から伝来した漢字は縦書きであったことから日本でも縦書きで書くようになりました。奈良時代の「古事記(こじき)」や「日本書紀(にほんしょき)」は漢字を使い、縦書きで書かれています。
また、書写などでは紙の上辺を「天」、下辺を「地」と考えています。天から地へ、すなわち上から下へと文字を縦書きにします。
なぜ右から書くのですか?右から書くと手が汚れます
この理由は、はっきり分かっていません。有力説の一つに昔は巻物(まきもの)に書いたり、読んだりしていました。実際には左手で巻物を持ち、右手で紙を引き伸ばして書いたり、読んだりしていたのです。そうしたところから右から左へ向かって書いたり、読んだりすることが自然であったのでしょう。左利きの人は困ったでしょうね。また、書くときは、筆を持つ手を紙面から少し離すので手は汚れません。さらに現在、本を1巻(かん)、2巻と数えることがあります。巻物を使用していた名残でしょうか。
なぜ、漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字などたくさんの種類があるのですか?
日本では中国から伝わってきた漢字を使って自分の考えや思いを書き表しました。しかし、中国からの漢字だけでは、自分の考えや思いを充分に書き表すことができませんでした、そこで、漢字の意味に関係なく、音だけ借りた漢字を利用して書く工夫をしました。これが「万葉仮名(まんようがな)」です。万葉仮名は日本で工夫され、考え出されたものです。
しかし、万葉仮名は複雑で種類も多かったので、この万葉仮名をくずして簡単に書く工夫をしたのが「ひらがな」です。ひらがなは平安時代に生まれ、美しくやわらかな形をしていたので女性が使う文字とも言われていました。
「カタカナ」もひらがなと同じ時期に作られました。これは万葉仮名の一部を取り出して簡単に書けるようにしたものです。特にお坊さんのお経はすべて漢字で書かれていたので、それを読みやすくするために行間(ぎょうかん)にメモを書いていました。しかし行間は狭くて万葉仮名を書くことは難しかったのでカタカナを考え出したのです。日本人の知恵には驚かされますね。 現在でも神社の神主が結婚式などで読む「祝詞(のりと)」は万葉仮名で書いていますよ。
「ローマ字」は明治の始め、漢字は複雑で字数が多く、難しいということから漢字を廃止しようとする運動が起こりました。漢字をなくし、ローマ字にするというのです。当時、ヨーロッパなどで学んだ知識人たちが支持しました。さらに戦後の昭和23年ころ、アメリカ教育使節団が日本にやって来て、日本語をローマ字表記に変えたいという動きもありました。しかし、多くの人たちはローマ字ではなく、これまでの漢字、ひらがな、カタカナ交じりの表記を大切にしたいという思いが強く、改めて日本独自の表記を見直したのです。ローマ字は国際的に通用することから、現在ではパスポートやクレジットカードの氏名などに記されていますね。
なぜ、世界共通の言葉にならないのですか?
英語を公用語・準公用語等とする国 | 人口 |
54ヵ国 | 2,107,312,000人 |
いろいろな理由があります。まず、日本語を母国語とする人数よりも英語を母国語とする人数の方が圧倒的に多いということです。それは、英語を母国語とするイギリスが世界中に数多くの植民地(しょくみんち)を持っていて英語を使用させていたからでしょう。また、アメリカが英語を共通語としていることも大きな理由です。
さらに、日本語は漢字、ひらがな、カタカナが交ざり複雑な文で決まりも多く、外国人にとって学ぶことが難しい言葉となっています。 しかし、世界の共通語とならなくても、私たちは美しく豊かな日本語をこれからも大切にしていきたいですね。
文責:元静岡県立高等学校長 藤本雅通先生