作文を上手に書くコツはありませんか?

「起承転結」という言葉を聞いたことがあると思います。文章を書くときの構成(組立)のことです。「起」は話を起こす。「承」は発展させる。「転」は場面を転じる。「結」はしめくくるというものです。例えば、「浦島太郎」で考えてみますと「起」は子どもが亀をいじめている。「承」は若者が亀を助けて竜宮城に招かれる。「転」は竜宮城で夢のような楽しい生活を送る。「結」はおみやげの玉手箱を開くとお爺さんになったというような構成です。おとぎ話でもこのように構成されていることから、文章は思いつくままに書くのではなく、まず構成を考えることが大切です。
作文は、次のように構成を考えると書きやすくなります。「起」は自分の言いたいこと、「承」はその理由、「転」は体験した具体例、「結」はまとめという構成です。書く順序は変えてもかまいません。書きたいところから書けばよいのです。準備として、事前に各場面で書いてみたいことを小さな紙にメモしておくのもよいでしょう。
一度書いたら何度も読み返して書き直し、「推敲(すいこう)」することが大切です。推敲は声を出して、読んで行うと効果的です。
ずいぶん前の話ですが、有名な女流作家に「書くコツ」を聞いたことがあります。すると彼女は「うーん。大通りで着ている服を一枚ずつ脱いで裸になることかしら。」と答えてくれました。文章を書く上で「服を一枚ずつ脱いで裸になる」ということが、どういうことなのか考え続けることになりました。
以来、私は文章を書くときには「上手に書こう」とか「立派に書こう」などと考えず、心の奥底にある思いや考えを飾らず素直に引き出して、平明で簡潔に書くようにしています。いまだ、裸になるような気持ちには到達していません。

人前で話すとドキドキし、話が早くなります。上手に話すコツはないですか?

人前で早くしゃべってしまうのは、緊張しているからです。そのようなときは、話す前に大きく深呼吸するとよいでしょう。以前、テレビ局のアナウンサーに緊張しないコツを聞いたことがあります。すると「私は、本番前に一度下を向いてから、ゆっくり正面を向くんです。すると落ち着いて緊張しないんです。」と教えてくれました。やってみると下に向いて息を吐き、正面で息を吸うので深呼吸になっているんですね。なるほどと思いました。
さらに、話すときに大切なことは「間(ま)」を取ることです。話しの中で句点「、」に当たる所は1秒程度、読点「。」に当たる所は2秒程度「間」を取ってほしいのです。テレビやラジオのアナウンサーの話は早いのですが、早く感じないのは、しっかり「間」を取っているからです。十分「間」を取ると「話し方が上手ですね」と言われますよ。
また、講演会の話を思い出そうとするとき、話の内容よりも、話し手の表情や話し方のほうが鮮明によみがえってくることがあります。認知心理学者のメラービアンは、このような現象について研究し、「メラービアンの公式」を導き出しました。 すなわち、「話全体の印象」=「話の内容(7%)」+「音声や音質(38%)」+「表情(55%)」となることを実験を通して検証したのです。この公式が示す数値からも、話をするとき、身ぶりや手ぶり、顔の表情が重要な要素になることが分かります。時々、鏡で自分の話しぶりをチェックしてみてもよいですね。さあ、自信を持って、表情豊かに話しましょう。

文責:元静岡県立高等学校長 藤本雅通先生