子どもたちだけでなく、大人であっても、「あれ?何でこう読むんだろう?」って思うことがありますよね。このページではそんな読み方の疑問について考えていきます。皆さんからの問い合わせや私たちが気が付いたことを随時掲載していきますので、時々、このページを覗いてみてください。
なぜ、「作物」は「さくもつ」と読むのに「農作物」や「工作物」は「のうさくぶつ」、「こうさくぶつ」と読むのですか?
文化庁では「農作物」は「のうさくぶつ」と読むのが一般的であって、「のうさくもつ」と読むのは、誤りであるとは言えないにしても普通には用いませんと説明しています。
なぜ、「のうさくもつ」か「のうさくぶつ」かという問題が起こったのは、「農作物」を意味する別の言葉に「作物(さくもつ)」という語があるからです。「作物(さくもつ)」とは「穀物(こくもつ)や野菜などの総称」です。(同じ表記の「作物」を「さくぶつ」と読むと「絵や彫刻などの作品」の意味になります。) この「作物(さくもつ)」という語に影響を受け、同じ意味で別の言葉「農作物(のうさくぶつ」を「のうさくもつ」と読み誤ったところから生じた言葉と考えられています。
本来「農作物(のうさくぶつ)」とは「農作(のうさく)+物(ぶつ)」であり「のうさくぶつ」と読むわけです。「工作物」も同じで「工作(こうさく)+物(ぶつ)」となり「こうさくぶつ」と読みます。したがって「農作物」、「工作物」は「のうさくぶつ」「こうさくぶつ」と読むのが適切であると言えます。しかし、「言葉」は長い時の流れの中で変化していきますので、将来、「農作物」を「のうさくもつ」と読む日が来るかもしれませんね。
現在、NHKでは農作物を「のうさくぶつ」と読んでいます。「のうさくもつ」と読むのは標準ではないとして放送では排除しているようです。
大地震は「だいじしん」ですか「おおじしん」ですか?
一般に音読みの漢字の前に「大」がつくと「だい」と読むことが多いようです。例えば、大家族(だいかぞく)・大規模(だいきぼ)・大多数(だいたすう)などです。 「おお」と読むものには、大火事(おおかじ)・大騒動(おおそうどう)・大掃除(おおそうじ)などがあります。
「大」を「だい」もしくは「おお」と読むことについては、規則性はなく、地域社会で昔からこのように読んでいるという慣習(かんしゅう)で読まれているようです。生活の中で個別に慣れるしかないようですね。NHKでは「大地震」は「おおじしん」と読んでいますよ。
なぜ、給湯を「きゅうゆ」と読めないのですか?
「給湯」の読み方は「きゅうとう」です。「きゅうゆ」と読むと自動車にガソリンなどを補給する「給油(きゅうゆ)」になります。一般的に漢字は、音(おん)どうし、訓(くん)どおしで読むのが基本です。「給」の音(おん)は「きゅう」、「湯」の音(おん)は「とう」であることから「給湯」は「きゅうとう」と音(おん)どうしで読むわけです。
例外もあります。例えば「本屋(ほんや)」、「残高(ざんだか)」など音(おん)+訓(くん)で読む「重箱(じゅうばこ)読み」という読み方や「見本(みほん)」、「場所(ばしょ)」など訓(くん)+音(おん)で読む「湯桶(ゆとう)読み」という読み方もあります。例外については、それぞれ個別に覚えていきたいですね。
文責:元静岡県立高等学校長 藤本雅通先生