これはおもしろい質問ですね。人間は電車の床に足を付けて電車と一緒に動いているけれど、空中に浮いているボールはどうなるんだろうか?って疑問に思いますよね。
ここで理解することがあります。ニュートンの第一法則(慣性(かんせい)の法則)です。
これは静止しているか、等速直線運動をしている物体は、外力が働かなければいつまでもその状態を続けるという法則です。
静止している物体は静止状態を続ける
皆さんはだるま落としで遊んだことはありますか?
まず、重ねられた積み木の一つをハンマーでたたきます。ハンマーでたたかれた積み木は飛び出しますが、ハンマーでたたかれない積み木はそこに止まり続けようとするため、重力で下に落ちます。うまくたたいて、最後にだるまさんだけになれば成功です。
外から力を受けない限り、同じ速さで同じ向きに直線的に運動している物体はそのまま運動し続ける
冬季オリンピックでのカーリング女子は素晴らしかったですね。このカーリングストーンですが、氷の上をほとんど止まることなく進みますね。しかし、氷のわずかな摩擦力で少しずつスピードが落ちたり、他のストーンに当たったりすることで、運動が停止します。
これが氷の上だからこのように動くのだけれど、草原や砂浜で行えばこのように動きません。つまりストーンに外力が働かなければずっと動き続けることになります。
では、電車の中の動きを考えてみましょう。図では右に電車が進んでいるとします。電車の動き始め、動いているとき、ブレーキがかかったとき、さて、乗っている人たちはA,B,Cどの図のような動きになりますか?
もうおわかりですね。動き始めはAの図のようになります。最初は止まっていたので、そのまま止まり続けようとします。しかし、電車が前に進もうとするため、後方に倒れそうになります。電車が等速で動いているときはBのように人間も等速で動き続けようとします。だからそのまま立っていられるのです。次に電車が止まろうとすると、今まで前方に等速で動いていましたので、そのまま動き続けようとします。しかし、電車が止まろうとするため、Cのように前方に倒れそうになります。
ではBの状態で、ボールを真上に投げたらどうなるでしょうか。ボールを真上に投げた場合は、ボールに対して真上に投げた外力が加わっても、進行方向に対して外力が加わったわけではないので、ボールも人間と同じく、電車の進行方向に等速で動き続けることになります。そのため、重力でボールはその場に落下することになります。しかし、この様子を外から眺めているとしたらどうなるでしょうか。人間もボールも電車の速度に合わせて前方に進んでいることになります。これを証明するための実験ユーチューブがありますので、それをご覧ください。
あなたも時速1375kmで動いている?
地球は1日で1回転しています。これを自転といいます。そして私たちはその地球上に立っています。
赤道上の周囲の長さは約4000万m※です。
日本の東京の位置は緯度が約35度なので、東京が1周する距離は4000万mよりも少なくなって約3300万mになります。すると東京にいる人は1日で約3300万m動いていることになります。時速にすると 33000km÷24時間 で1375km/時 となります。
例えば、時速200㎞で新幹線が走っていたとします。中に乗っている人は、景色も見えず振動もなければ動いているとは思わないでしょう。しかし、外から動いている電車を見れば、電車も人間も時速200㎞で動いていることがわかります。地球上に立っている場合も同じです。地球は時速1375㎞で回っているのに人間は何も動いていると感じません。しかし、この地球を宇宙から見れば、そこに立っている人間も地球の速度で動いて見えることになります。
※もともと1mは赤道と北極点までの距離の1000万分の1と定義していましたので、そう考えると赤道から北極点までの距離は1000万mとなります。だから赤道の周囲の長さはその4倍と考えられるので約4000万mとなります。